英語の月の名前は実はすべてラテン語に由来がある。
現在のカレンダーで使われているのは「グレゴリオ暦」と呼ばれる暦なのだけれど、その前は「ユリウス暦」という暦を採用していた。
ユリウス暦の「ユリウス」の部分はユリウス=カエサル、英語で言うとジュリウス=シーザーから取られていて、7月を表す英語Julyはユリウスから取られている。
ユリウス暦が採用される前は王制であった時の2代目ローマ王ヌマ=ポンピリウスという人が採用していた暦が採用されていて、その前は月の数が10であったらしい。
今回はそんな暦の歴史について見ていきたいと思う。
始めは10の月だった
暦の歴史は古代ローマに紀元を持つ。
もちろんそれ以前から暦はあっただろうし、ローマ由来でない暦もあるのだけれども、現在採用されているグレゴリオ暦の起源は古代ローマに求められる。
そんなローマの暦は最初は10の月であったらしい。
この頃は1年の日数が定まっていた訳ではなかったようで、2代目の王ヌマの際に大幅な暦の変更があった。
1年の日数を355日として、月の満ち欠けの関係で月を12に、20年ごとに調整されるというものであった。
この際、10の月を12の月にした関係で、新しい月は前に持ってきたため、8を表すOctoberは10月になった。同様にNovemberは11月に、Decemberは12月になった訳で、個人的にはこの辺りはややこしかった。
なにせ中学生に月の英名を覚えさせるのに「たこは8なのになぜOctoberは10なんですか」と聞かれたら答えられなかったからだ。人間は無意味な暗記はしにくい。中には出来る人もいるだろうが、俺は中々月の名前が覚えられなかった。
この辺りの話は別記事に詳しいのでそちらを見てほしい。
時代は下り紀元前1世紀頃、歴史上の一大スターであるユリウス=カエサルが1年を365日とする「ユリウス暦」を定めた。
カエサルと言えば軍人のイメージが強いと思うけれど、文筆家でもあり優れた政治家であり神官でもあった。まさに万能の天才と言える人物で、このユリウス暦はかなり長い間使われた。
カエサルの後継者はご存知オクタヴィアヌス、後にアウグストゥスと呼ばれる初代ローマ皇帝な訳でが、彼らの死後この2人を称える意味で7月をユリウス=カエサルにちなんでJulyに、8月をアウグゥストゥスにちなんでAugustにした訳である。
ちなみに9月を二代目皇帝ティベリウスにちなんだ名前にしようという話もあったが、ティベリウスはそれを拒んでいる。後に暴君になる人物だが、最初は本当にまともだった…
それはさておきローマにおける12月の表し方と由来をここで一回まとめてみよう。
*()内は英語名
1月:lanuariusu(January) ローマの神であるヤヌスに由来がある。ヌマはヤヌスを大変信奉していたことから採用されたと思われる。
2月:Februarius(Febrary) 「清める」という意味の単語「purficatio」が由来。2月は精肉の季節だったのでこの名前が付いたという。もしくは贖罪と浄罪の神フェブルスから。
3月:Martius(March) 軍神マルス(アレス)から来ている。マリウスやマルクスといったローマでは一般的な名前の姓もこのマルスが由来であると言われていて、初代王ロムルスはマルスの子供であるという伝承がある。
4月:Aprilis(April) 美の女神アフロディナ(ビーナスもしくはウェヌス)が由来であると言われている。♂は元来マルスを表す記号なので、♀を表すアフロディナとの対比なのかも知れない。
5月:Maius(May) 豊穣の女神マイアとする説と商いの神メリクリウス(ヘルメス)とする説がある。5月1日にローマでは女神マイアを祀る儀式を行う風習があるので前者だと思われる。
6月:Lunius(June) ユピテルの妻であるユノ(ヘラ)が由来。ローマやギリシャの神話では誰よりも恐ろしい神である。ユピテル(ゼウス)が浮気をしてユノ(ヘラ)が怒り狂うのはある意味鉄板である。トロイ戦争がややこしくなったのも…おっと誰か来たようだ。
7月:Iulius(july) 冒頭で言った通りユリウス=カエサルから来ている。それ以前は5番目の月という「Quintilius」が使われていた。
8月:Augustus(August) こちらも冒頭で述べた通りオクタヴィアヌスことアウグゥストゥスから来ている。なおフランスにおけるオーギュストの称号も同じ語源である。
9月:September(September) 7番目の月という意味になる。3月から数えているから7番目。
10月:October(October) 8番目の月という意味。たこは足が8本だからオクウトーバーと覚えさせたい。足が10本なのはイカだからかなりややこしい。
11月:November(November) 9番目の月という意味。
12月:December(December) 10番目の月という意味。
なお、アウグストゥス以降勝手に自分の名前を月の名前にしたローマ皇帝は沢山いたが、現在でもつかわれているのは7月と8月だけである。この2人はローマ史上においてもまた歴史上においてもまさに役者が違うと言えそうだ。
ユリウス暦は1582年にローマ教皇グレゴリウス13世が「グレゴリオ暦」を制定するまで使われていて、かつ月の名前はそのまま使われている。
今生きている我々がローマ由来の名前や制度を多く使っていることから考えても、古代ローマがいかに人類の歴史に影響を与えたかがわかる。