船乗りは古代から現在にかけても男性中心であることが多く、長い時代女性を船に乗せることさえ嫌がっていた。
最終最後の大海賊バーソロミュー・ロバーツは船に女性を載せただけでその乗組員は死刑という掟を定めたほどだ。
そんな状態にも関わらず、18世紀の世界史には二人の女海賊の名前が残っている。
アン・ボニー
アン・ボニーはアイルランドに住む弁護士とその妾の子として生を受けた。
ボニーの父親は元々妻がいたようだが、その妾と共に蒸発。アイルランドからアメリカのサウスカロライナに移住した。
一家はプランテーションを経営できるぐらいに裕福であったが、チャールストンという町にいた若き船乗りジェームズ・ボニーと恋に落ちてそのまま駆け落ち、二人は逃避行さながら海賊の楽園と言われたニュー・プロヴィデンスに行きつく。
そこで出会った海賊のジョン・ラカムに惚れられ、毎回のようにプレゼント攻勢にあい、次第にボニーの感心はお金、もといラカムに傾いていき、夫のジェームズとは離婚、お金ラカムについていくこととなった。
ボニーは気性が激しく、戦闘に際しては男たちよりも勇敢に戦ったという。
メアリ・リード
メアリ・リードはイギリスの首都ロンドンでこれまた私生児として生まれた。
父は行方知れずだったようで、母は養育費を得る目的でメアリを男として育て、メアリは13を過ぎたころには軍隊に入隊していた。どうやら入隊に際しては性別を偽っていたようだ。
メアリはある日軍人と恋に落ち、そのまま二人は軍隊を除隊、つつましやかに居酒屋の経営をしながら暮らすようになる。
小さいながらも幸せな生活を送っていた二人だが、メアリに不幸が起こす。最愛の夫が死んでしまったのだ。
メアリはそれを機に再び男装し、今度は船乗りとしてカリブ海に向かう商船に乗り込むも今度はその船が海賊の掠奪を受けることになる。
その際捕まったメアリの行先はくしくもアン・ボニーと同じジョン・ラカムの船であった。
二人の女海賊
アン・ボニーはメアリ・リードのことを当初本当に男だと思っていたようである。ボニーがメアリを男として魅力的に思って口説いたところ女性だったのにびっくりしたというエピソードが残っている。
偶然にもラカムの船には二人の女性が海賊として乗り込んでいたことになり、そしてそのことは船長と2人だけの秘密であったという。
1720年、ラカムの船はイギリス海軍の攻撃を受けて船長以下全員あえなく捕まってしまう。最も勇敢に戦ったのは二人の女海賊であったらしいが、ジャマイカ島に移送されて乗組員は全員死刑。ボニーとメアリーだけは妊娠していたために刑は免除、しかしメアリーは病気に罹ってしまいそのまま獄中で死亡、ボニーはその後どうなったのかわかっていない。