以前から気にはなっていたのだが、今さらながらアマゾンプライムでマーティンスコセッシ監督、レオナルドデカプリオ主演の映画「ウルフ・オブ・ストリート」を見てみた。
かつてウォール街にあこがれていたことがある
高校時代、将来はMBAをとってウォール街で働いてやるぜ!!というなぞの野望を持っていた。プロスポーツ選手になる!とかと同じような感じだ。
やりたいことがコロコロ変わるような子供で、その後色々チャレンジするも悉く失敗するとはそのころは微塵も思っていなかっただろうな。
高校時代、日本を飛び出したかった。
15,16歳の少年の目にさえ、この国に将来はないように思えた。でもそんな先の将来じゃなくて、何かのチャンスが欲しかったんだと思う。
バブルが崩壊して、日本は自信を失ってしまっていた。
こんな小さな国が世界第二位の経済大国になっていたのだから、それはいかなる理由であれ誇るべきことなはずなのに、俺が子供の頃既にバブルが崩壊していて、それを誇るような風潮は一切なかった。
代わりにアメリカにあこがれる風潮は今も昔も変わらないんじゃないかな。
第二次世界大戦以降、日本は戦争に負けた国なのだ。ドイツも日本も決して国連の常任理事国になることはないだろう。それに価値があるかどうかは別としても、政治的には一級になりようがないのだ。
日本にあるのは金だけだった。
あれから月日が経ち、日本には金も無くなってしまったが。
結局大学は法学部に進み、司法試験を目指すも一度も受けることなく勝手に挫折し、大学3年生だか4年生の時に実際の証券マンと話す機会があったので質問してみた。
「新たな顧客から100万円を引き出すのと既存の顧客の100万円を200万円にするのはどちらが評価されるのか?」
答えは当然前者だった。証券マンの仕事は客にもうけさせることじゃなくて、客に取引をさせて手数料を儲けることだ。
それが日本の金融業界なのだと失望したが、なんのことはない、どの世界でも金融の常識はそうなのだ。
今回見た「ウルフ・オブ・ウォールストリート」でも似たような話が沢山出てきた。
顧客にいくら損をさせたかで酒が飲めるようじゃなきゃ証券マンは務まらない。
この映画がどこまでウォールストリートの実際に近いのかはわからないが、まさにそんな価値観がモロに出ていた映画だった。
地獄の沙汰も金次第
この映画はとりとめもない映画だったと思う。
マーティン・スコセッシの映画はわりとそういう映画が多くて、ロバート・デニーロが主演した「タクシードライバー」なんかもそういう面があったし、もやもやは残るような映画を作るのだが、今回は見終わってみて何よりモヤモヤとした感情が残った。
映画に教訓を求めるわけじゃないが、この映画は一体なのだったんだろう?
本能に忠実な男が破滅する、かと思ったら金があるのでそんなこともなかったぜという、つまり何もない映画だったのだ。
映画自体はテンポも良かったし楽しめた。でも見終わったあとに何も残らなかったのだ。
ちなみにこの映画の主人公ジョーダン・ベルフォードは実在の人物なんだそうだ。
実際に相場の操縦やペニー株詐欺をやった人物らしく、驚くべきことに現在でもモティベーショナル・スピーカーとしてセミナーをやって儲けているという。
悪党ほどよく笑う
この映画を観ていて、あ、ツイッターによくいる奴だなと思ってしまった。
特にブロガークラスターやアフィリエイトクラスターによく出没するような奴らで、次から次へと胡散臭い奴が出てくるわけだが、この映画のモデルになった人物はその元祖のような人物で、この映画の映画化権収入は95万ドルであったそうだ。
映画そのものよりもその事実の方がエンタメだ。
最終的に悪党ほどよく笑う。
ツイッター上の悪党たちも自己啓発めいたことを言ってセミナーに誘導したり有料noteを売りつけたりやりたい放題だ。
おかげで俺は個人的にツイッターを見るのが苦痛になっていて、ツイッターからまともな人間がどんどん離れていくという事態になっている。
直接被害はないからと言っても見ていて気持ちのいい物じゃない。
なのでなんだって映画を観てまでそんなものを見なきゃいけないんだという気持ちになってしまった。
あまり評判がよくなかったが、大体その通りで、別に見なくても良かったなという感想だった。