PS4最高傑作RPGペルソナ5は現代日本に対するアンチテーゼである。

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今さらながらペルソナ5をクリアした。

2016年9月に発売されたにも関わらず2019年5月にクリアした。

俺がPS4を買ったのが2018年12月のことで、クリアするまでに大体半年ぐらいかかった。

その半年の間に「ペルソナ5 ザ・ロワイヤル」やら「ペルソナ5無双」やら新作の発売が決定してしまった。

特に「ペルソナR」なんか2019年10月31日の発売で、あと5か月後だ。端からそちらを買えばよかったのかも知れないけれど、やりたかったものはしょうがない。

そしてこの記事の需要がどこにあるかわからないけれど、クリアしたのだからしょうがない。

一体この記事は誰に向けて書いているのだろう?

 ペルソナシリーズとは

この記事をお読みの方の大半は「ペルソナシリーズ」を全く知らない人が多いかもしれない。

ドラクエやFFシリーズほどはメジャーじゃないし、国民的RPGとは言えない上に王道RPGという訳でもない。

元々は「女神転生」シリーズの派生作品で、PS1の時代に女神転生異聞録として発売されたのが始まりだ。

女神転生の派生作品は結構あって、魔人転生やらデビルサマナーズやら元の名前はどこへやらという作品も結構ある。

そんな派生作品の中でもペルソナシリーズは別格に人気があって、今や元祖ともいえる女神転生シリーズよりも人気が出てしまっているほどだ。

今回のペルソナ5に関しては全世界出荷本数が270万本と株式会社アトラスでも例のないほどのヒット作品になっていて、ペルソナ5自体もPS5における最高のRPGとさえ言われるほどで、元祖の最新作ともいえる「真・女神転生4」の売上が全世界で60万本ということを考えると、もはやアトラスの代表的なシリーズだと言えるだろう。

女神転生からやっていることは同じ

アトラスのRPGの基本は「悪魔を仲間にして合体させてより強い悪魔と冒険する」という1行に尽きる。

女神転生シリーズでは悪魔と一緒に冒険するのだが、ペルソナシリーズでは悪魔を仮面(ペルソナ)に宿して異世界を冒険する。

ペルソナ5では人の歪みが具象化された「パレス」や「メメントス」と言ったダンジョンを冒険し、その「主」を倒していくことで物語が進んでいく。

悪魔の宿った仮面をつけられるのはそれらのパレスやメメントスだけで、日常生活では普通の高校生として活動する。この辺りがドラクエやFFと異なる点であろう。それらがファンタジー世界を冒険するのに対し、女神転生シリーズは崩壊した東京が舞台に、ペルソナシリーズは「現代日本」を舞台にする点も異なる。

ペルソナの世界観は現代日本を忠実に織り込んでいて、今回のペルソナ5も政治家や警察、官僚や教師、医師、渋谷、池袋、新宿などそのまま日本が舞台となっている。

そこに住まう人々もかなりリアルで、ホストに騙される女子高生や足を洗った元暴力団員、日々の生活にストレスを抱える教師など等身大の人間にスポットがあたる。

ファンタジーなんだけどリアルという唯一無二性を持ったRPGがペルソナシリーズだと言えるだろう。

ペルソナ5クリアしたぜ

ここから先は本編のネタバレを含むので、まだクリアしていないという人はクリアしてから読んで欲しい。

ここまで偉そうに色々書いて見たが、俺はそんなにアトラスのRPGをやっていない。いままでやったのだって「ペルソナ3」「ペルソナ4」「DSJ(ディープストレンジジャーニー)」「真女神転生4ファイナル」ぐらいのものだ。

アトラスのRPGはものすごいボリュームな上にマルチエンディングなのでそんなにたくさんはやれない。

ペルソナ5をクリアするのに約100時間かかっている。

本なら10冊以上は読めるだろうし、映画なら驚きの50本分だ。

それでもその100時間を全く飽きさせない作りは流石だと思った。

ペルソナ3と比較して

シリーズものの宿命として、以前の作品と比べられてしまうという点がある。

まずはペルソナ3との比較。

ここから先は5はもちろん3のネタバレも含むので注意して欲しい。

結論から言うとシナリオは3、システム面は5、その他は大体互角と言った感想だ。基本的には互角の出来だったと思う。

3はタルタロスがとにかく面倒くさかった。

それゆえに2周目のクリアをする気にはなれなかった。

ペルソナシリーズはクリア後のデータを引き継いでプレイが可能なのだが、3はタルタロスをもう一回やるのが嫌でもう一周しなかった。

なにせタルタロスに入るとしばらくセーブできない上に、敵が即死系の魔法を連発してきて、主人公が死ぬと問答無用でゲームオーバーになってしまい、下手すると数時間が無駄になる。タルタロスの部分に関して言えば3はクソゲーと言って良いだろう。

だが、ラストバトルに関しては3>>>>>5ぐらいの差がある。

3のラスボスは幼き頃から主人公の一部であり親友である存在で、自らの意思というよりもその宿命によって全人類を滅ぼさなければならなくなったいわば「死」そのものと言える存在で、主人公以外が、仮にその命を犠牲にしても倒すことは不可能であった。しかも主人公が命をかけたことをほとんど誰も知らない。

5は途中まで、ジョーカーが因縁の相手である正義を倒したところまでは神がかっていた。もしあの時点で物語を終わらせていれば「神ゲー」であったと言える。

しかし最後のパレスをクリアしてからの展開はあまり良いとは言えない。「現代日本」を舞台にしている以上、それはしかたのないことなのかもと思う。物語の中でさえも、日本という国の未来に光はささないようだ…

一見するとハッピーエンド風なのは5だが、全体として考えると3の方が実はハッピーエンドだったりする。

3は2006年の発売とかなので、あの頃はまだ未来に対し希望を捨てていなかった時期なのだなぁと思う。両者の違いはその作成年代にあると言えるかも知れない。

ペルソナ4との比較

こちらも5はもちろん4のネタバレも含むので注意して欲しい。

無印版の4はやったことがなく、「ペルソナ4ザ・ゴールデン」しかやったことがない。

ゴールデンに関して言えば、日本RPGにおける最高傑作の1つであり、5は流石にそれを超えることはできなかった。

もっとも、5はまだ完全版である「ロワイヤル」が発売されていないので、まだ最終的な結論を出すのは早い。

…って、俺はロワイヤル買う気なのだろうか…

両者の違いは舞台の違いでもある。

5は渋谷や新宿などが出てくる東京だったのに対し、4は多少寂れた田舎町の話であった。5はそういう意味で女神転生っぽかったと言える。最近では女神転生がペルソナっぽいと言われているのも面白いが、両ブランドは元々1つの作品群だったことを考えればそれほどおかしなことでもない。

4も5も「仲間との絆」が最重要テーマになっている。

両方の主人公は、本来1人1つしか持ちえないペルソナを複数所持できる「ワイルド」の能力の持ち主だ。

*3の主人公ももちろんワイルドの持ち主だ。

ワイルドの能力は最強の能力だが、同時に最弱の能力にもなりえる。

ワイルドはその特徴として人と人のつながりによってその強さを引き出されるからだ。

そうなると、人と人の関係が希薄になりやすい東京よりも田舎町の方が主題に対して濃厚な物語になりやすい。

女神転生が殺伐とした物語になりやすいのも東京が舞台であるという面が大きいだろう。

あとはキャラクターは4の方がちょっと好きだったかも知れない。特に親友ポジは陽介が理想的過ぎたし、探偵役も。

保護者は両方ともよかった。

堂島親子は初めから主人公ウェルカムだったが、佐倉に関しては最初主人公を煙たがっていながらも段々心開いていく感じが良かった。3にはない要素が4と5にはあった。3に決定的に足りないのは父性だったような気がする。

音楽に関しては正直4が圧倒的だった。

ペルソナ4の音楽はドラクエやFFに負けないレベルで、特に4の「reach out to the truth」は前ゲーム音楽の中でもトップクラスに好きな曲だ。

5もいい曲が多いのだが、コレ!という音楽がなかったような気がする。

ゴールデンに関しては結局3周ほどした。ちなみにそれが2018年の話。

2018年も結構つらい年だった。最初こそ好調だったが後半は嘘のようにボロボロになってしまい、ペルソナ4だけが救いみたいな時期さえあったほどだ。

最初にクリアした時、いや、クリアが近づいてきた時「終わって欲しくない」と心の底から思ってしまったほどだ。あそこまで終わって欲しくなかったゲームは小学生の時にやったドラクエ5以来だった。

そしてクリアした後即2周目をプレイした。2周目が終わってすぐに3周目をやった。

一応5も今2周目をやっているのだが、主人公のレベルを引き継げなくて軽く絶望している…

もう一回パレスをやるのは正直キツイ。

4はその点手軽でもあった。

4を絶賛しすぎだが、5が勝っている部分もある。

何と言ってもシステム面は5は歴代アトラスのゲームの中でも最高だと言っても良いだろう。

その分攻略の難易度が下がってしまったとも言えるが。

俺の場合は双子のコミュニティをマックスにしたら今のレベルよりも遥かに高いペルソナの作成が可能になったので、レベル50代でシヴァを作成してしまい、それ以降クリアまでヌルゲーと化してしまった。

後は医者のコミュをMAXにしたらSPが自動回復する「貼る大気功」というアイテムをいくつも買ってしまい攻略難易度は一気に下がった。便利過ぎるのも考え物かも知れない。

ただ、それがつまらなくしたかというそうでもなくて、無双感とそれに伴う爽快感があったのでそれはそれで良かった。

ただ、ラスボス戦(真のラスボス)もやはり4の方が遥かに良くて、4は3と互角ぐらい。両方とも音楽は最高だったし、イベントとしても楽しめた。演出も良し。

後は修学旅行や文化祭と言った学生ならではのイベントが5は弱かった。もう少し色々あっても良かったんじゃなかろうか。4はあんなに楽しかったというのに…

シリーズのお約束が伏線となる妙

4ばかり褒める結果になってしまったが、5で一番感心したのはやはりイゴールだ。

イゴールの声優であった田の中勇は5の時にはお亡くなりになっていた。そのためイゴールの声が変わっていた…のかと思えばなんとイゴールは偽のイゴールで、本物のイゴールは田の中さんの声で生きていた。

これは3や4をやった人向けの演出ともいえるが、様々な演出と相まってうぉおおとなった。これは実に、良い意味で意表を突かれた。

魅力的なキャラクター

5に出てくるキャラクターはかなりリアルだ。そして魅力的だ。

中でも俺が好きなのは「ダメ寅」こと吉田寅之助だ。かつて「蔵元チルドレン」として実力もなく信念もなく当選してしまった元国会議員が再び、今度は理念と信念をもって政治家を目指す話で、あらゆる政治的な駆け引きを拒否して真の政治家を目指すところで終わった…のかと思いきやそのまま国会議員に当選して、主人公を最後は助けてくれる。

女性記者も大きな圧力によって潰されそうになるが、仲間の無念を背負ってジャーナリズムを貫いて、こちらもやはり最後に主人公を助けてくれた。

後は医者も。藪医者かと思いきや実はめっちゃいい医者で、こちらも大いなる力に押しつぶされそうになるのを免れている。

これらは皆、現代日本のアンチテーゼだと言える。

作中における主人公たちの敵は、いわば日本の病巣であった。

腐った教師、腐った政治家、腐った政治家のいいなりになるテレビ局の社長、大手新聞社の社員、検察、などなど。 

本来は正義を貫くべき立場の人間達が正義を貫かない、あるいはそうしたくてもできない状況をゲームながら見事に描き切っている。

2019年に起きた以下の痛ましい事件など、現代日本を非常によく表した事件であり、国民を絶望に叩き落すのに十分すぎるほどであった。

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この事件を知って無力感を感じなかった国民はいただろうか?

ペルソナ5の真の敵は、そのように無力感を感じた人々であり、もはや抵抗を諦めた人々の心なのである。

反逆の翼

我は汝…汝は我…
汝、ここに新たなる契りを得たり
契りは即ち、囚われを破らんとする
反逆の翼なり

 

ペルソナシリーズに共通するのは「ベルベットルーム」の存在だ。

3ではエレベーター、4ではリムジンの中、5では監獄の形をとった。

ベルベットルームは訪れた者の心を反映した形をとる。

5では最初のペルソナが「アルセーヌ」であるとともに、そのモチーフはフランスにある。ちなみに3はギリシャ神話で、4は日本建国神話。

アルセーヌはきっとモーリス・ルブランの生み出した怪盗紳士アルセーヌ・ルパンがその由来であろう。

看守の「ジュスティーヌ」「カトリーヌ」もフランス語由来で、どこか「バスティーユ監獄」を思わせる。

今回のベルベットルームにはギロチンがある。

それらから連想されるキーワードはただ一つ。

「フランス革命」である。

フランス革命が起きた当時、王侯貴族が国を好き勝手に蹂躙していた。民衆は反逆の翼を持ちてそれらを打倒し、フランスは民主制国家へと生まれ変わった。

その流れで「ナポレオン」が出てくるかと思ったけれど、そのような「英雄」は出てこなかった。

ペルソナ5の世界では、ついに「革命」はならなかった訳である。

フランス革命の成功は、民衆の蜂起にあった。ペルソナ5ではついに民衆は蜂起しなかった。

囚われを是とする多くの人たちが、反逆をよしとしなかったのだ。

良くも悪くも「日本」という国をよく表している。

最終的に処理しきれなかった物語

獅童正義はある意味ナポレオンのメタファーともいえるかも知れない。

革命をなしたフランスにおいて、自ら皇帝を名乗った英雄。

実際に獅子に載って帽子をかぶった様はアルプス越えをするナポレオンのようだった。

怪盗が英雄を否定する。

手段はともかく、国を立て直すという目的においてはあのような強力な主導者が必要であるのも確かで、しかしあのような強力な指導者が生まれなかったのがこの国でもあったのだ。

ペルソナ5は、あまりにも重すぎるテーマを扱ったがゆえに、消化不良を起こしてしまった物語のように思える。

4はあくまで「仲間達との絆」がテーマであった。

5のテーマとは一体なにだったのであろう?

現代日本のパラレルワールドともいえるペルソナ5の日本は、強力な指導者を欠いてどのように進んでいくのだろう?

ダメ寅こと吉田寅之助の存在はそういった意味で非常に大きい。

彼だけではなく、大いなる圧力に屈せず反逆の翼を持ち続けた面々の存在はいわば救いである。

怪盗行為によらず囚われを破らんとする人々。

 

我は汝…汝は我…
汝、ここに新たなる契りを得たり
契りは即ち、囚われを破らんとする
反逆の翼なり

我、ペルソナの誕生に

祝福の風を得たり
自由へと至る、更なる力とならん…

 

さぁて、さっそく2周目をやりますか。

まだ見てないコミュニティがいくつもあるんだ。