ギリシャ悲劇の最高傑作ソフォクレスの「オイディプス王」のあらすじを5分で解説!

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勝手にシリーズ化している5分であらすじがわかるシリーズ

今回はソフォクレスの書いたギリシャ文学の、いや、世界文学レベルでも最高傑作といえる「オイディプス王」について見ていきたい。

このオイディプス王の影響力たるやすさまじく、「エディプスコンプレックス」の語源にもなっている。あまり聞きなれない言葉だろうけど、日本で言うところの「マザーコンプレックス」所謂「マザコン」である。マザコンは所謂和製英語で、心理学用語の「エディプスコンプレックス」が正式名称である。

日本ではまた、村上春樹の「海辺のカフカ」なんかにも登場している話で、とにかく後世の文学や文化、学問に大きく影響した話なのである。

 デルフォイの神託

ギリシャ文学やローマ文学を語る上で外せないのが「デルフォイの神託」である。今回のオイディプス王にも出てくるし、ローマ文学の最高傑作アエネイスにも出てくる。

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 民主的なイメージのある古代ギリシャ世界だが、その実はやはり他の古代帝国同様神権政治で、最終的な意思決定の際にはデルフォイ神殿に祭られている「アポロン」の声に従うという特徴があった。

アポロンの声には誰も逆らえず、哲学者として有名なソクラテスは「ソクラテスより知恵のある者はいない」という啓示を受けて当時の知識人階級の人々と論議を重ね、結果的に「無知の知」に至ったという話もある。

このデルフォイ神殿には「汝自身を知れ」という言葉があり、ターレスやソロンなどのギリシャ哲学者たちもよく通っていたという。

そんなデルフォイ神殿にテーベの王ライオスが訪れるところからこの物語は始まる。

 

ライオス王はデルフォイにて「汝の子が汝を殺すであろう」という神託を受けてしまう。

当時のギリシャ世界においてデルフォイの神託は絶対であったためライオス王は生まれた子供の殺害を家臣に命じるが、家臣はそっと子供を山中に置いてくるように部下に指示、この際足の踵に傷をつける。この部下は子供を哀れに思い羊飼いの夫婦に子供を預ける。

この羊飼いもさらに子供のなかったコリント王に献上、踵に傷があることから子供に「オイディプス(踵に傷がある者)」と名付けた。

オイディプスの冒険

たくましい青年へと育ったオイディプスはある時自分がコリント王の子供ではないことを聞かされる。王と王妃に問を投げつけるオイディプス王だったが、回答は得られなかった。

それではとアポロンに神託を受けに行く。

「汝は父を殺し母と交わるであろう」

こんなとんでもない神託を受けたらもう旅に出るしかないと思いオイディプスはコリントを離れる決意をする。信託は絶対なのだ。

やけになったオイディプスは途中様々なもめ事を起こしながら旅をする。酷い時には道を譲らないことで喧嘩になって人殺しまでしてしまうんだから中々の激情家である。

 オイディプス王の冒険の中でも特に有名なのがスフィンクスとの闘いであろう。

エジプトのテーバイではヘラが放ったスフィンクスが暴れていた。ギリシャ神話のヘラはいつだって恐ろしい…

スフィンクスは道行く人々になぞなぞを出し答えられないと食べてしまうという恐ろしい怪物で、「一つの声をもちながら、朝には四つ足、昼には二本足、夜には三つ足で歩くものはな~んだ♪」という一休さんにでも出てきそうな謎々をオイディプスに出した。

余談だけどスクエアとかが作るゲームには「スフィンクスリドル」って技があるけれど、意味はスフィンクスが出す謎々という意味である。謎々恐ろしい。

オイディプスは難なく「それは人だろ」と答えてしまう。生まれたら四つん這いでやがて二本の脚で立つようになり、老年になると杖をつく。そんな感じ。

 謎々に応えられたスフィンクスはあっけなく死ぬ。なんでやねん!と思うけど死んだ。

エジプトの人たちはスフィンクスがいなくなったことに大喜びで、ぜひテーベの王になって欲しいと頼む。

聞けばテーベの王は旅に出たまま帰ってこない。多分死んだのだろうと。

故郷を離れたオイディプス、こんないい話はないと思いテーベの王妃と結婚。子供も2人できて順風満帆な生活をおくっているように思えたが…

疫病と真実

テーベに疫病が流行る。作物も取れなくなる。

困ったら神託だ!

王となったオイディプスが神託を聞きに行くと、「疫病や作物の不出来はテーベの王ライオスが殺害されたことによるものだ。犯人を処刑するか追放しなければこれは収まらない」という神官の声が。

オイディプスはその下手人は誰なのかを問うが神官は答えない。

オイディプスが食い下がると神官は「羊飼いに聞け」とだけ。業を煮やして真相を独自に調査させ、羊飼いを自らのもとに呼び寄せるオイディプス。

そこで実は自分こそがライオス王を殺害した犯人であると知り、同時に自分がライオス王の息子であることを知る。そしてさらには愛妃イオカステーが実は自分の母親であったことを知るのであった。

父を殺し母と交わる

デルフォイにおける神託は実現したのであった

イオカステーは自ら命を絶ち、オイディプスは自らの光を封じた後娘のアンティゴネーとともに旅に出る

作者のソフォクレスってどんな人?

紀元前496年から406年の人と言われていて、大変長生きした人である。

アイスキュロス、エウリピデスと共にギリシャ3大悲劇作家と言われ、当時盛んだった悲劇共演という出し物では20代の若さで優勝。実に24回の優勝回数を誇り3位以下になったことはないというずば抜けぶり。

123篇の戯曲を著したと言われているが、現存するのはこのオイディプス王含め7篇だけである。

その功績…やはり天才!